持合い株とは?
持合い株(もちあいかぶ)とは、企業間でお互いの株式を保有し合うことを指します。これは主に日本企業で見られる慣習で、歴史的には企業同士の安定的な関係を築く手段として活用されてきました。
持合い株のメリット
経営の安定化: 友好的な企業同士が相互に株式を保有することで、買収リスクを低減し、経営の安定化を図ることができます。
長期的な協力関係: 持合い株により、企業間の長期的な協力関係が促進され、共同プロジェクトや資源の共有が容易になります。
持合い株のデメリット
資本の固定化: 持合い株により、企業の資本が固定化され、流動性が低下します。これにより、機動的な資本運用が難しくなります。
経営の透明性低下: 持合い株は外部からの経営監視を弱める可能性があり、経営の透明性が低下する懸念があります。
東証プライム7割、1100社が持合い株削減へ
2024年5月18日の日経新聞の記事によると、東証プライムに上場する企業のうち約7割にあたる1100社が、持合い株の削減に動いています。これは、株主からの圧力や経営の効率化を求める声に応えるための措置です。
持合い株削減の背景
なぜ近年、多くの企業が持合い株の削減をおこなっているのでしょう。
株主からの圧力: 株主は企業に対し、より高い経営の透明性と効率性を求める傾向が強まっています。持合い株はこれらの要求に対する障害とみなされることが多いです。
コーポレートガバナンス強化: 日本の企業は、国際的な基準に合わせてコーポレートガバナンスの強化を進めています。持合い株の削減は、その一環として行われています。
持合い株削減の影響
株価の変動: 持合い株の売却が進むことで、一時的に株価が変動する可能性があります。しかし、長期的には企業価値の向上に寄与することが期待されます。
経営の透明化: 持合い株の削減により、経営の透明性が向上し、外部からの監視が強化されます。これにより、より健全な経営が実現されるでしょう。
持合い株削減で成功した企業の具体例
トヨタ【7203】
トヨタ自動車は、持合い株の削減を進めることで、経営の透明性を高めると同時に、資本の流動性を向上させました。これにより、株主からの信頼が増し、株価も安定的に推移しました。トヨタは持合い株を減らすことで、戦略的な投資の自由度が高まり、技術開発やグローバル展開を加速させています。
持合い株削減で失敗した企業の具体例
東芝【6502】
東芝は、持合い株の削減を試みましたが、経営内部の混乱や不正会計問題が重なり、持合い株の売却がうまく進みませんでした。結果として、経営の安定化には寄与せず、逆に株価の不安定化を招く一因となりました。持合い株削減のタイミングや方法の問題が大きく影響したケースといえます。
持合い株の削減についての課題 京成電鉄【9009】実例
京成電鉄【9009】
京成電鉄は、東京と成田空港を結ぶ鉄道会社で、持合い株の削減を進める意向を示しています。京成電鉄はオリエンタルランド(OLC)【4661】の株式の約20%以上を保有しており、OLCも京成電鉄の株式を保有しています。この持合い株関係は持分法の適用により、財務諸表に影響を及ぼし合うため、経営の透明性に問題を抱えています。
持分法
持分法(Equity Method)は、関連会社や関連事業体に対する投資を会計処理する方法の一つです。この方法では、投資先会社の株式を取得した企業が、その会社の経営に実質的な影響力を持つ場合に適用されます。
具体的には、持分法では投資先会社の株式を取得した企業が、取得した株式の割合に応じて投資先会社の純利益や純損失を自社の収益計上に反映します。つまり、投資先会社の業績が良ければその利益が、悪ければその損失が自社の業績に反映される仕組みです。
持分法は、取得した株式の割合が20%から50%未満であり、かつ投資先会社の経営に実質的な影響力を持つ場合に適用されます。これにより、投資先会社を関連会社として自社の財務諸表に組み込むことができ、経営の透明性や投資の効果を評価する上で重要な情報源となります。
2024年3月の株式売却
2024年3月、京成電鉄は保有していたOLCの株式の一部を売却しました。この売却により、京成電鉄のOLCに対する保有比率は一時的に減少しましたが、依然として20%以上を維持しています。この売却は、持合い株削減の一環として行われたものですが、完全な売却には至っていません。
パリサー・キャピタルの要求
英投資ファンドのパリサー・キャピタルは、京成電鉄に対し、OLCの株式売却を求めています。パリサー・キャピタルは、持合い株の削減を通じて京成電鉄の経営の透明性を高め、資本効率を向上させることを目的としています。この要求は、京成電鉄に対する圧力として作用し、持合い株削減の動きを加速させる要因となっています。
売上面の影響
京成電鉄は、OLCの業績が自身の連結決算に反映されることで、売上や利益に対する影響を大きく受けます。特に、OLCが運営する東京ディズニーリゾートは高い収益性を誇るため、その業績が京成電鉄の財務諸表に寄与することで、安定した収益を確保できます。これにより、京成電鉄はOLCの株式を保有し続け、持分法の適用範囲内に留めたいと考えています。
時価総額のねじれ問題
京成電鉄とOLCの持合い株関係には、時価総額のねじれという問題も存在します。OLCの時価総額は京成電鉄の時価総額を大きく上回っているため、OLCの株式を売却することで得られる資金は京成電鉄の財務状況に大きな影響を与えます。しかし、これが京成電鉄の収益構造や経営戦略に与える影響も大きく、持分法の適用外になることで財務諸表の透明性が向上する一方で、売上への影響や経営の安定性が懸念されます。
売却の難しさ
このように、京成電鉄にとってOLCの株式売却は、単純な持合い株削減以上の意味を持ちます。持分法の適用範囲に留まるためには、一定の保有比率を維持する必要がありますが、その一方で経営の透明性を高めるためには売却が必要です。このバランスをどう取るかが、京成電鉄の大きな課題となっています。
今後の見通し
持合い株の削減は一時的なトレンドではなく、長期的な企業改革の一環として継続することが予想されます。企業は、持合い株を減らすことで得られるメリットを最大限に活用し、持続可能な経営を目指す必要があります。
まとめ
持合い株は、日本企業の歴史的な経営手法の一つですが、現代の経営環境ではそのデメリットが目立つようになってきました。東証プライム上場企業による持合い株削減の動きは、今後も続くでしょう。京成電鉄とオリエンタルランドの関係も、この流れの中で大きな変化を迎える可能性があります。持合い株削減による経営の透明性向上と、それに伴う経営の安定性確保のバランスが、今後の焦点となるでしょう。
京成電鉄とOLCの例は特殊なものですが、持合株削減のニュースは双方の企業に大きな影響を与えています。
投資家としても株価や今後の業績に関わる大事な情報源き注目しています。
6月の新エリア解放狙いと株主優待の二つの狙いで買った株なので、6月以降にある程度利益が出たら一度売却予定なのですが...