2024年の米国大統領選挙を控え、現職のジョー・バイデン大統領が再選を断念し、選挙戦から撤退することを発表しました。バイデン氏は、任期中の職務に専念することを決意し、副大統領のカマラ・ハリス氏を後任の大統領候補として推薦しました。この動きは、1968年のリンドン・ジョンソン大統領以来約50年ぶりで、再選を狙った現職大統領が選挙戦から撤退するというきわめて異例の出来事です。
本記事ではバイデン氏の選挙戦撤退とその反応、後任ハリス氏について詳しく見ていきます。
バイデン大統領の撤退とハリス氏の推薦
2024年の大統領選挙を前に、ジョー・バイデン大統領は再選を断念し、選挙戦からの撤退を発表しました。バイデン氏はSNSのX(旧Twitter)にて次のように述べました。「民主党や国にとっては私が選挙戦から退き、大統領としての残りの任期のまっとうに集中することが最良だと信じている」。また、別の投稿では「私はことしの選挙に向けた党の候補者としてカマラを全面的に支援し、推薦したいと思う」として、カマラ・ハリス副大統領を後任の大統領候補として支持する考えを示しました。
バイデン氏は「みなさんの大統領を務められたことは、私の人生の中で最大の名誉だった。再選を目指すつもりでいたが、私が選挙戦から退き、残りの任期は大統領としての職務を全うすることのみに専念することが、党にとっても国にとっても最善の利益になると考える」とする声明も発表しました。さらに「民主党員よ、今こそ団結してトランプ氏を打ち負かす時だ」と述べ、ハリス氏への支持を呼びかけました。
ハリス副大統領の経歴と政策
経歴
カマラ・ハリス氏は西部カリフォルニア州出身で、父親はジャマイカ出身、母親はインド出身の移民の2世として生まれ育ちました。カリフォルニア州の司法長官を務めた後、2017年に上院議員となり、2020年の大統領選挙で民主党の候補者指名争いに挑戦しました。支持が広がらず党の候補者選びから撤退した後、バイデン氏への支持を表明し、バイデン氏によって副大統領候補に選ばれました。
副大統領としての役割
主要な政策
- 刑事司法改革:ハリスは刑事司法改革に積極的に取り組み、警察の暴力や人種的不平等に対する対策を推進しています。
- 気候変動対策:クリーンエネルギーの普及や温室効果ガスの削減に力を入れています。
- 移民政策:移民改革にも力を入れ、合法化プロセスの整備や国境セキュリティの強化を訴えています。
支持基盤
ハリスは、民主党内の進歩派からの支持を得ており、特に若者や有色人種、女性からの支持が強いです。
初の女性・黒人大統領候補
ハリス氏が大統領に就任すれば、アメリカ史上初の女性・黒人大統領となることが注目されています。
関係者からのコメント
バイデン大統領
「私はことしの選挙に向けた党の候補者としてカマラを全面的に支援し、推薦したいと思う」【X】。
オバマ元大統領
「バイデン氏はアメリカで最も重要な大統領の1人であり、私にとって親愛なる友人である。そしてきょう、彼が最高の愛国者であることを改めて認識させられた」【X】。
ペロシ元下院議長
「バイデン大統領は、常にアメリカのことを第一に考える愛国心の強い人である。彼の残したビジョンや価値観、それにリーダーシップは、彼をアメリカ史上最も影響力のある大統領の1人にした」【X】。
シューマー院内総務
「ジョー・バイデン氏は偉大な大統領で偉大な立法の指導者であるだけでなく、本当に素晴らしい人間だ。彼の決断は容易なものではなかった」【X】。
ジェフリーズ院内総務
「バイデン大統領は、アメリカ史上、最も実績のある指導者の1人だ。バイデン大統領が知性と気品と威厳をもって導いてくれたおかげで、アメリカはよりよい場所になった」【X】。
クリントン元大統領とヒラリー・クリントン元国務長官
「アメリカ国民とともにバイデン大統領の功績に感謝する。ハリス副大統領を推薦し、彼女のためにできるかぎりの支援をする」【X】。
国際的な反応
イギリスのスターマー首相
「バイデン大統領の決断を尊重するとともに、大統領としての残りの任期中、ともに仕事ができることを楽しみにしている。彼はそのすばらしいキャリアを通じてそうしてきたように、アメリカ国民にとってこれが最善だと信じることに基づき決断を下したのだ」【X】。
スナク前首相
「バイデン大統領とともに仕事をして、彼のアメリカに対する愛情と奉仕への献身を私は目の当たりにした。われわれのパートナーシップはオーストラリアを含む安全保障の枠組みAUKUS、イスラエルへの断固たる支援、中東イエメンの反政府勢力フーシ派の脅威から国民を守るための共同での取り組みなど、重要な成果をもたらした」【X】。
メディアの反応
ニューヨーク・タイムズ(NYT)
「バイデン大統領が民主党同僚からの強い圧迫の中に執権第2期に向けた選挙運動をあきらめた」と報じ、「トランプ前大統領のホワイトハウス復帰を阻む新候補を探す努力の中で大統領選挙構図がひっくり返った」と指摘しました。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)
「バイデン大統領が高齢と能力に対する懸念の中で再選キャンペーンを終わらせた」と伝え、「50年にわたる彼の政治経歴に上限線を置くことであり、『米国史上最も記念碑的な政治的崩壊(collapse)』のうちのひとつ」と評価しました。
トランプ氏とバンス氏の発言
トランプ元大統領のコメント
トランプ前大統領は、「いんちきジョー・バイデンは我が国の歴史上、群を抜いて最悪の大統領だ。左派が誰を擁立しても同じことの繰り返しだ」と投稿して、あらためてバイデン氏を非難しました。さらに、CNNテレビに対して「ハリス副大統領の方がバイデン氏よりも簡単に勝てる」との認識を示しました【CNN】。
J・D・バンス上院議員のコメント
共和党の副大統領候補に指名されたJ・D・バンス上院議員は、「ジョー・バイデン氏は私が生きてきた中で最悪な大統領であり、カマラ・ハリス氏も彼と常に歩みを共にしてきた」と投稿し、バイデン大統領とハリス副大統領を非難しました。そのうえで「トランプ氏と私は、民主党の候補が誰であろうとアメリカを救う準備はできている。かかってこい」と改めて対決姿勢を鮮明にしました【X】。
ハリス氏の選挙戦の課題
カマラ・ハリス氏は副大統領としての経験を持ちながらも、大統領候補としての選挙戦は苦戦が予想されています。その課題として以下の点が挙げられます。
- 支持率の低さ:最新の世論調査では、ハリス氏の支持率は38.1%であり、52.3%の人々が彼女を支持していないという結果が出ています【Real Clear Politics】。
- 実績の不足:バイデン政権で移民対策を担当したにも関わらず、目立った成果が少ないとの批判があります。特にメキシコ国境の現場視察を就任後5か月以上行わなかったことが共和党からの批判を招きました。
- 認知度と信頼の向上:多くの有権者に対してハリス氏の政策やビジョンを理解させ、信頼を築くことが求められます。
これらの課題を克服するために、ハリス氏は選挙戦を通じて政策の具体化と実績のアピールを強化する必要があります。
総括
バイデン大統領の撤退により、2024年の大統領選挙は大きな混乱を迎えています。ハリス副大統領が初の女性・黒人大統領候補として推薦される中、彼女の支持率の低さや実績の不足が課題となっています。一方で、トランプ前大統領とバンス上院議員はバイデン政権を強く非難し、共和党候補としての対決姿勢を鮮明にしています。メディアや関係者のコメントからも分かるように、バイデン大統領の撤退は今後の選挙戦に大きな影響を与えることが予想されます。
その他、時事ネタの関する記事はこちら